神様の非存在証明

　神様はいるんだろうか。
　信じる信じないの信仰問題は、この際置いておいて。
　科学的数学的方法で、答えを出そうとした人たちがいた。

　神様がいることを熱心に証明しようとした人がいた。
　もう一方で、神様がいないことを証明しようとした人もいた。

　定番の「神の非存在証明」として、こんなのがある。

　曰く。神様はなんでも創ることができる。
　なら、自分が持ち上げれない岩を創ることができるか？

（この場合の神様は、キリスト教なんかに出てくる全知全能神を指す。
　日本の、例えば八百万の神々みたいなのは、とりあえず置いておく。）

　さて、上の証明を吟味してみよう。

　可能だ→全能神なのに持ち上げられない岩がある→矛盾。

　不可能だ→全能神のくせにできないことがある→矛盾。

　どっちらも矛盾だ。つまり、前提が間違っている。
　全能神なんて、はなから存在できっこない

　Ｑ．Ｅ．Ｄ．

　でもこの理屈には、残念ながら落とし穴がある。
　そもそも、全能神に不可能はないはずなのだ。

　全能神がもし存在するなら、自分が持ち上げることの出来ない岩を創造できるだろう。
　それだけでなく、自分が持ち上げることの出来ない岩を、持ち上げることだって出来る。
　それは矛盾だって？　問題ない。全能神は、自分の持ち上げることの出来ない岩を、矛盾なく持ち上げることだって出来る。だって、全能だから。
　そんな方法があるはずない。出来るもんならやってみろ、と言われても困る。
　そんなことは全能神だからできるのであって、普通の人間には実行はおろか、やり方を示唆することだってできない。
　でも、全能神ならできる。

　なんか騙されているようだが、理屈は合っている。
「ゲーテルの不完全性定理」をつきつめていくと、こんな感じになるんだろうか。