カメとヒゲ

　久しぶりの日記更新。でもバカ話。

　映画「ガメラ　大怪獣空中決戦」で、制作者がこんな趣旨のことを言っていた。

「劇中、カメという単語を使わないように気をつけた。
　ガメラは見ての通り、大きなカメそのものだ。でも、登場人物はだれもそのことに触れない。
　一旦それを言葉にすると、シリアスな雰囲気が一気に崩れてしまうからだ。」

　実際、本編では「カメ」という単語はひとつも出なかった。それが功を奏したのかはともかく、映画「ガメラ」は、怪獣というきわめつけファンタジーな存在を描きながら、「もし現実に怪獣がいたらどうなる？　どうする？」をリアルに、シリアスに描くことに成功している。

　制作者の心遣いが、実を結んだのかもしれない。

　一方。こんな例もある。

　アニメ「ターンＡガンダム」。タイトルにもなっている主役メカのターンＡガンダムは、登場してすぐ言われる。

「この機械人形、ヒゲがあるんです」

　職人シド・ミードによるターンＡガンダムのデザインは、シンプルながらとても奇抜なものだ。
　特に顔のデザイン。誰がどう見ても「ヒゲ」に見えるモノが、にょきっと左右に生えている。

　ガンダムにヒゲ？　どう考えてもミスマッチだ。デザイン発表直後、有象無象のガンダムファンたちが一様に脱力したのも、よくわかる。実際僕も、「なんじゃいこりゃあ」と、脱力した一人だ。

　にもかかわらず（？）、ターンＡガンダムの脚本家たちは、「ヒゲ」という単語を連発した。

「ヒゲのモルスーツ」「ヒゲの機械人形」「ヒゲめぇー！」

　時に親しみを込めて．時に憎しみを込めて。時には畏敬と畏怖の感情を込めて。
　いつのまにか、ヒゲという単語は、ターンＡガンダムの象徴になっていた。
　その結果かどうかは分からないが、ターンＡガンダムは、殺伐とした戦争を描きながら、ある種ユーモラスな雰囲気を持ち込むことに成功している。

　これが、制作者の意図通りなのかは、わからないが。

　こうして並べてみると、二つの話。全然違うようで、どこか似ている。
　ま、だからどうだ、というわけじゃ、ないんですが。