テラフォーミング

　他の惑星（または衛星など、それに類するもの）を、地球のような「人間が住める環境」に、人為的に改造すること。

　通常は、生存可能な大気（ちょうどいい気圧と温度、呼吸可能な成分）を確保することから始まる。

　例えば、金星のような超高温、超高気圧の惑星では、まず、気温を下げる。そうすると、大気圧もある程度下がってくるので、さらに大気中の二酸化炭素を何らかの方法で回収して、大気圧を下げる。しかるのち大気中の二酸化炭素を分解して酸素を取り出す。

　火星のような低温、低気圧の惑星では、大気圧を上げる。すると、温室効果である程度気温も上がる。大気の元は極冠のドライアイスや、地球の酸化鉄から得る。火星よりももっと寒い星では、直接温室効果を上げ、惑星全体を暖めるような方策が必要になるだろう。

　月や小惑星などの小さな星では、重力が小さいので、安定した大気を維持することができない。　これらの惑星は、例えば地下都市やドームのような閉鎖空間をつくり、その中だけを人間が住める環境にすると思われる。広義ではこれもテラフォーミングと言えなくはないが、「惑星を人為的に改造した」という感覚は薄い。

　木星型惑星のように超分厚い大気そのものが惑星のような場合、惑星の大気そのものを調整することは困難だろう。それに木星型惑星には地表が無い。
　この場合も、小さな（といっても場合によっては大都市くらいの大きさの）閉鎖空間だけが、人類のすみかになる。

　重力も大切な要素（＊１）だが、人為的にいじるのは難しい。
　反重力装置（今現在ではまったく架空の存在）が無い限り、惑星の重量そのものをどうこうするしか方法は無い。よその星を持ってきてくっつけたり、惑星を分割したり、、という乱暴な手も無いでもないが、いかにもこれは大掛かりすぎる！

　テラフォーミングは、惑星規模の大規模な事業だ。
　例えば、惑星全体を覆い隠す「日傘」のような、超巨大建造物が必要かもしれない。
　生物や（最近流行の）ナノマシンによる自己増殖システムで、惑星を覆い尽くす必要があるかもしれない。
　少なくとも、地表プラントをひとつつくって、ハイ、おしまいには、ならない。

　場合によっては、元々その星にある資源だけでは、十分なテラフォーミングはできないかもしれない。
　例えば、水も酸素もほとんどない惑星では、彗星のような「巨大な雪玉」は、テラフォーミングの材料として重宝するだろう。

　安定した大気が確保できれば、次は、生態系の再現になる。森を造り、草原を造り、海を造る。
　植物だけでは生態系は維持できない。動物、鳥、昆虫、微生物、さまざまな生命。
　地球のような「みどりの星」が、テラフォーミングの最終目標だ。

　遠い未来、地球人が宇宙に拡散するようになった時代。
　宇宙の至る所でテラフォーミングが行われ、無数の「地球」が生まれる。

　人類は「地球」というミームを拡散するための、キャリアに過ぎないのかもしれない。

（＊１）
　重力が大きすぎる場所では、骨格や筋肉が身体を支えることができない。
（とはいえ、重力が大きな場所で暮らしていると、身体能力が高くなる、というＳＦは、けっこうあるんだよね。スターウルフとか、あおいちゃんパニックとか、ドラゴンボールとか。）
　重力が小さな、もしくはほとんど無い場所では、今度は骨格や筋肉の能力が、急激に衰える。
　永遠にそのような環境で暮らすならかまわないのかもしれないが．．．。いや、何世代にもわたる低重力の影響は、まだわかっていない。ひょっとしたら、有害かもしれない。
　そんなわけで、ターンＡガンダムに出てくるムーンレイス（月に住む地球人）は、体内のナノマシンでその手の悪影響をキャンセルしている、という設定になっている。