核爆弾
核反応により放出されるエネルギーを用いた爆弾。
21世紀の時点で、およそ考えうるとんでもない破壊力を持った、最高最悪の兵器。人殺しの道具。
核爆弾に使われる核反応には、核分裂と核融合がある。
核分裂は、ウランやプルトニウムといった、重い元素の原子核が「分裂」するエネルギーを利用したもの。核融合は逆に、軽い元素の原子核が「融合」するエネルギーを利用したもの。
原子核は鉄の状態が一番安定しており、鉄より軽い元素を重くしても、鉄より重い元素を軽くしても、エネルギーが生まれる。
最初の原子爆弾の開発は、きわめて難航した。
ウランは、ウラン濃縮という問題があった。一口にウランと言っても、「同位体」といういくつかの種類があって、核分裂しやすいウランは、核分裂をストップするウランの中にまじっている。核分裂しやすいウランだけを選り分ける必要があるのだが、同じウランなので化学的な方法が使えない。きわめて難しく、根気のいる作業だった。
プルトニウムの場合は、あまりに激しく爆発するので爆発させるのが難しいという、皮肉な問題があった。ダイナマイトを使って山火事を消し止める話があるが、最初に核分裂を起こしたプルトニウムのエネルギーで、全体が核分裂を起こす前に周囲のプルトニウムが吹き飛ばされてしまうのだ。この問題はフォン=ノイマンという奇人天才のによる「爆縮」という奇想天外なアイデアと、それを実現する途方も無い科学力と技術力でカバーされた。
正直、原子爆弾がアメリカで完成したのは、奇跡だと思う。生きた伝説とも言うべき世紀の天才たちがロス=アラモスの研究所に集められ、湯水のような税金とともにマンハッタン計画につぎ込まれるようなことが無ければ、少なくとも今世紀中に原爆は生まれなかったろう。当時ドイツや日本も原子力の研究をしていたが、原爆のようなものが実現できるとは、誰も思っていなかった節がある。天才たちがアメリカに集まったのはナチスのお陰であり、資金がつぎ込まれたのは第二次世界大戦の賜物。そう考えると、日本という国に住むものとしては、なんともいえない忸怩たるものを感じる。
最初の原子爆弾は難航したが、いったんやり方が示されると、製造はそれほど難しいものではなかった。
発展途上国等で「核爆弾がつくられた」というニュースは、たいがい原子爆弾である。
核融合と核分裂では、核分裂の方が簡単に火がつく。ただし、生じるエネルギーは核融合の方が大きい。
ただし、核融合を起こすためには、大量のエネルギーがいる。一旦核融合が起ればそれ以上のエネルギーが得られるので元は取れるのだが。そこで、荒っぽい方法が考えられた。原子爆弾で、核融合を起こすのである。それが水素爆弾、水爆だ。核融合の燃料に水素(正確には、水素の同位体の三重水素)が用いられるため、そう呼ばれている。
実際の水爆は、まず、原子爆弾があり、そのまわりを三重水素で覆う。さらにそのまわりをウランで覆うという、よくわからん構造になっているらしい。つまり、水爆は核融合だけでなく、核融合と核分裂をうまくミックスした爆弾、ということになる。
長くなったので、今回はこのくらい。
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