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チューリングテスト

 二つの部屋を用意する。
 片方の部屋には、観測者役の人間を置く。
 もう片方の部屋には、人間か、テスト対象の機械を置く。

 観測者は、タイプによる文字だけで、隣の部屋の「何者か」とコミニケーションする。
 この方法で観測者が、隣の部屋にいるのが人間か、機械か、区別できなかった場合、機械は合格。
 晴れて「知性を持った機械」と考えることができる。

 以上が、チューリングテストの概略だ。
 一回のテスト結果で心もとなければ、テストを繰り返し、統計的手法で答えを出せばいいだろう。
 この機械は99%以上の確度で知性を持っている、等の結果が出る訳だ。

 チューリングテストは、機械が知性を持てたかどうかを、検証するためのテスト方法だ。
 天才、アラン・チューリングによって提唱された。
 そもそも、知性とは何か、誰もが納得できるような基準は無い。
 基準が無いのだから、検証もできない。
 それでは仕方ないので、ならばと考えられたテスト方法なのだろう。「人間が知性を持っている」という前提さえ受け入れられるなら、チューリングテストの結果も受け入れられるはずだ。

 チューリングテストの検査対象は、別に機械に限らない。例えばエイリアンが知性を持っているか。人間以外の動物が知性を持っているか。うまく翻訳機械などを介することができれば、チューリングテストで審査できるはずだ。
 また、知性以外にも、感情を持っているか、良心を持っているか、などの検証も、やはり、チューリングテストでできると思われる。魂を持っているか、とか。

 チューリングテストの注意点。
 チューリングテストの観測者の役目は、決して「相手が機械であることを見破る」ことではない。
 観測者がそう考え始めると、とたんにテストは不正確になる。
 テストの目的は、人間のふりができるか、ではなく、あくまで知性を持っているかの検証だからだ。

 わかりにくいかもしれないが、こんな風に理解すればいいかもしれない。
 例えば、架空の国、A国のことを考えてみよう。A国の人は自己中心的だ。自国人だけが知性を持ち、外国人は知性を持っていない、と、考えている。
 チューリングテストの観測者を、A国の人にやってもらおう。A国人の質問は、自然と偏ってくる。テスト対象が知性を持っているかどうかより、まず、A国人かどうかを確かめようとする。これでは、正しい観測結果は出てこない。
(余談だが、似たようなことは昔からあったし、今でもある。黒人や、教育を受けていない貧しい人は、知性を持っていないと思われた。悲しいことだ。)

 機械かどうかを見破ろうとするのは、「機械は知性を持てない」と、はじめから決めつけている結果に過ぎない。
 確かにそれは正しいかもしれないが、最初からそう思い込んでいたら、何のためのテストなのか。
 この手のミスは、SF作家でもやってしまうようだ。某作家に「初めてのキスの味は?」と質問する話があった。作者も物語の中の観測者も、キスと知性の相関なんて考えてない。最初から機械に答えられない質問を探しているに過ぎない。これでは正しいテストができないだけでなく、一部の人間でも不合格者が出てきそうだ(笑)。

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Comments

最近なら巷のチャットにAIを紛れ込ませてみるのも楽しいかも知れませんね。
昔、大学時代の知人がそういう実験をしてみたとか聞いた事があります。
結果は教えてくれませんでしたが……。
まぁ、チャット相手が人間かどうかなんて、実際の所あまり気にしませんが(笑)

Posted by: DaAtsu | 2004.04.30 03:24 PM

 あくまで「機械と見破られない」テクニックは、いろいろあるみたいです。対応できない話を識別する能力と、そのはぐらかしかたとか。
 余談ですが、チャットの相手が男性か女性か、年齢がどれくらいか、さっぱりわからんかったりします。
 僕もチューリングテストで「知性なし」と判定されちゃう口でしょうか(笑)。

Posted by: 御宗銀砂 | 2004.04.30 10:44 PM

そのむかし、人口無能が流行った時期がありましたね。人口無能付きWEBチャットも結構流行りましたし。

しかしこう、どこのチャットなどでも、「あいつは絶対人工知能に違いない。その証拠にオフに1度も顔を出してない」とゆー人はいるよーです。そーならないために、オフ会などは積極的に参加しましょー(笑)

Posted by: うぇいく | 2004.05.02 06:04 PM

まじめなコメントも=^^;=
観測者にとって、「知能があることの証明は、人間であること以外に確認方法が無い」という前提があるなら、当然な結果として、「人間かどうか」を判定するような内容になるのは当然な気が。
ただ、一言で『知能』といっても、「人間以外が知能を持っている可能性がある」と言うときの知能が、はたして「人間が想定する知能のうち、人間に依存している部分および単なる知識を除いたら、それも人間は『知能』と呼ぶのか」とか、疑問は尽きない。

( 定義も規定もできないものを証明も判定もできない。「人間が知能を持っている」という前提のみで試験を行うなら、当然の結果として、知能があることを確認するには「人間であるかどうか」を問うしか手段が無い。ただし、この前提のみでは、知能がないことはいかなる方法でも確認できない(人間じゃないことは確認でかもしれないけど)。 )

Posted by: うぇいく | 2004.05.02 06:15 PM

 うぇいくさん、こんにちわ。
「定義も規定もできないものを証明も判定もできない。」というのは、厳密に言えばその通りなんですが、厳密さを放棄してしまえば、「測る」ことはできると思います。「すき」「きらい」のアンケートで嗜好を測定するように。
 問題があるとすれば、「人間だけが知能を持っている」と考えていない人でも、人間判定を(無意識に)やってしまうことかもしれませんね。
 もし人間を特別視するなら、今度は人間判定が必要になってくる。貴方の目の前にいるのは人間か、レプリカントか。バイオボディに脳を移植した人間か。ディックの世界。奥が深いネタです。

Posted by: 御宗銀砂 | 2004.05.06 10:30 AM

Hello, I enjoy reading through your post. I wanted to write a little comment to support you.

Posted by: limestone and granite cleaning | 2015.07.04 12:21 AM

And you all have looted idea very badly in Up west and east from last 2-3 months.

Posted by: AIRTEL TRICK GUJARAT MAY 2015 | 2015.08.10 06:23 AM

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